サイネックス・マガジン

自治体DXに必要不可欠!デジタル人材の確保と育成

目次
  1. デジタル人材を確保・育成するための政府方針
  2. デジタル人材を確保・育成するためには?
  3. デジタル人材を確保・育成する方法
  4. まとめ:まずは知識をつけて「イメージ」できるようになろう!

DX推進で地域を活性化したい自治体でも、デジタル人材の確保や育成が大きな課題です。忙しい業務の合間を縫っても、具体的な方法や専門知識が不足しがちです。そこで本記事では、方針やスキル別のポイント、採用や研修の活用事例などを紹介し、計画や体制づくりに役立つ内容をまとめました。



デジタル人材を確保・育成するための政府方針

総務省は、自治体等のDXを促進するために「人材育成・確保基本方針策定指針」を策定しました。そこでは、自治体のDXを推進するにあたって必要となる4つの基本方針が示されています。①人材育成、②人材確保、③職場環境の整備、④デジタル人材の育成・確保、の視点で方針をまとめており、自治体ごとの状況に適した戦略を実施しやすくなっています。

自治体はこうした指針を踏まえて、デジタル人材の育成と新たな人材の採用を強化し、事業や職員研修など多面的な手段を活用しながら体制を整備していくことが重要になっていきます。業務やサービスをより効率化し、住民ニーズに合わせた施策を提供するためにも、デジタル人材をどう確保して育てるかが大きな課題となっていくと考えられます。



デジタル人材を確保・育成するためには?

自治体でデジタル人材が不足しがちな理由としては、人材育成方針を立てられていないこと、組織内の認識共有・機運醸成不足、予算上限による採用枠の制約、専門的知見をもった職員が少なく必要なスキルレベルを設定できない、体制面での柔軟性の欠如、具体的な業務計画の不透明さなどが挙げられます。

人材育成方針がなければ、自治体として体系的な施策を行えません。そうした課題もあり、急速に策定が進んでいるようです。総務省が公表している「⾃治体DX・情報化推進概要」によると、令和5年度で全市区町村のうち49.7%が策定しています。 1年前の令和4年度では32.5%だった状況 と比べると、急速にデジタル人材の育成方針を策定する取り組みが進んでいます。しかし、約半数の自治体は方針策定ができておらず、人材育成を進めにくい状況に置かれているといえます。

また、組織内の認識共有・機運醸成不足については、総務省の資料「都道府県における広域的なデジタル人材確保等の推進に向けた実態調査」 によって、市区町村のうち8割近くが課題と回答しており、継続的な取り組みが求められている状況です。

DXを推進するためには、外部から専門人材を確保する方法と、既存職員を育成する方法の両方を検討する必要があります。とくに業務改革やシステム導入を円滑に進めるには、デジタル技術の導入に対する理解を自治体全体で共有し、計画的に実施を進める体制を整えることが求められます。また、民間企業との連携や研修の利用など、多様なアプローチで将来的に必要なスキルを確保していく方向性も重要になってくるでしょう。



一般行政職員に求められるスキルレベル

デジタル時代において住民ニーズに対応した行政サービスを実現するには、一般行政職員であってもデジタルリテラシーを向上させ、導入されたシステムやツールを適切に活用する能力が必要になってきます。それは、庁内業務の効率化を目指すRPA(Robotic Process Automation:ルーティーン業務などを自動化できるツール)の利用やオンライン申請など、業務効率化や住民コミュニケーションの円滑化に取り組む際、ITに関する一定の知識が求められるためです。

スキル不足を放置するとデータ活用やシステム管理に支障をきたし、DX推進を阻む要因となります。こうした課題を解決するためには、基本的なITツールの操作やセキュリティ対策などを学ぶ研修を実施し、段階的に職員のスキルを向上させることが大切です。

日常業務に追われて時間がとれない場合でも、オンライン学習や外部セミナーを活用して計画的にデジタル知識を習得し、行政のサービス水準を高めていくことは可能です。さらに、職員同士で事例を共有しながら学び合う機会を確保し、具体的な成果につなげる工夫も効果的です。このように、職員一人ひとりがデジタルを意識して行動することで、組織全体の能力が底上げされ、持続的な行政改革と住民サービス向上につながります。



DX推進リーダーに求められるスキルレベル

DX推進リーダーは、デジタル技術の活用方法や行政の実務知識を兼ね備え、プロジェクトを的確にとりまとめる能力が求められる役割です。専門性の高い分野から事業の方向性を立案するプロデューサーの指示を具体的な計画に落としこみ、実施段階で職員や外部企業と連携しながら進捗を管理する役割を担います。

たとえば、住民向けオンラインサービスを導入する際は、セキュリティの確保やシステムの利便性など多方面を調整して、短期間で効果を上げられるよう段取りを組むことが必要になります。組織内の合意形成や意思決定を円滑に進めるため、デジタル知識を共有しながら各担当の視点を整理し、具体的な課題を洗い出して最適な解決策を導く力が重要になります。

さらに、職員研修や外部支援の活用方法もリーダーが判断して指示する場面が多く、全体を通じてマネジメント力を発揮することが期待されます。こうしたDX推進リーダーの存在が、自治体内部の理解を高めてチームワークを強化し、地方のDX施策を実現させるエンジンとして作用するでしょう。



高度専門人材に求められるスキルレベル

DX戦略やデータ分析、セキュリティ対応、さらにシステム監視・管理など、高度専門人材には個々の分野で深い知識と経験が必要とされます。住民向けアプリの開発や業務効率化のためのデータ活用など、具体的に高度なスキルが必要なプロジェクトでは、こうした人材が専門領域をリードして、実装や品質向上を図ります。

たとえばセキュリティ分野では、外部からの攻撃に対応するだけでなく、システム障害が発生した場合のバックアップや復旧手順の整備も重要な役割になります。データ分析に明るい専門人材は、既存の行政データを解析して課題を可視化し、必要な対策を立案することで、実施計画の効果を高められます。

さらに地方でのDX推進には、地理や住民の状況に合った技術選定が求められるため、専門分野を超えた連携や補佐も担う場面も多いです。こういった高度専門人材が職員とチームを組みながら業務を進めることで、住民サービスの質を向上させ、地域課題を解決する上で大きな成果が期待されます。



デジタル人材を確保・育成する方法

地域のDXを推進していく上で、自治体でのデジタル人材の確保・育成は早急に取り掛かる課題であることは、言うまでもありません。政府が定めている「人材育成・確保基本方針策定指針」など、自治体DX推進計画や手順書にも人材の確保・育成が明記され、デジタル人材の確保・育成を戦略的に進める必要性が示されています。

職員のスキルアップや外部との連携を検討しながら、計画的な人材確保に取り組むことが重要になってきています。研修やセミナーを活用して職員を教育し、専門分野の知識をもつ人材や企業と連携を図ることで、業務改革を効率的に実行する体制づくりが可能になります。こうした取り組みを通じて、地域に根ざしたDXを持続的に推進していくことが期待されています。



デジタルに関するオンライン学習コンテンツの活用

デジタル技術に前向きな人がいる一方で、なかなか馴染めず後ろ向きになってしまう人もいます。そのため、全体的なリテラシーを底上げする仕組みとしてオンライン学習コンテンツの活用が注目されています。こうしたコンテンツでは、デジタル化のメリットや活用例、システム導入に伴うリスクをわかりやすく学習させることができ、職員同士で情報共有を行う足がかりにもなります。

予算や時間的制約のある職員でも、空き時間にアクセスして学習できるため、知識の確保やスキル向上につながりやすい取り組みです。学習内容を共有し合うことで組織全体の理解が深まり、業務改善のアイデアが生まれやすくなるのも利点です。さらに、住民サービス向上に役立つ具体的なツールの使い方を動画や資料で学べるため、導入時のハードルも下がり、DX推進を後押しする環境が整えやすくなります。



ワークショップ形式によるデジタル技術学習体験の提供

実際に手を動かして体験するワークショップ形式の学習は、座学とは異なり、現場感や楽しさを伴って理解を深められるため幅広い人から好評です。ノーコードツール(難解なプログラミング言語を使わず直感的にプログラムを組み立てられるツール)を使って、簡単なアプリやワークフローをつくってみると、プログラミングの知識が乏しくても実務改善のアイデアが湧きやすいです。

自治体の職員が一緒に取り組む場を設定すれば、お互いの経験談を交換しながら課題解決の糸口を発見できるようになります。こういった実務に近い体験を通じて、デジタル技術を活用した改革や住民へのサービス提供をより具体的にイメージできるようになります。また既存業務の改善につながるだけでなく、データを活用した新しい施策の立案や、外部企業との協働へと発展する可能性もあります。

ワークショップで得た知識を庁内で共有する体制づくりにも力を注ぐことで、持続的な学習文化が根付き、自治体全体のDX推進を底上げできるようになるでしょう。



デジタルの専門的経験を積めるジョブローテーションによるキャリアアップ

自治体では定期人事でジョブローテーションが行われます。この仕組みを活用すれば、多くの職員がデジタル関連の業務を経験できるようになります。たとえば、情報システム担当部署やデータ分析を担うセクションに一定期間配属することで、実務を通じて専門的なスキルを習得できます。現場で実際にシステムを運用し、不具合や課題があればその都度原因を調査し、必要な対策を検討する過程でノウハウを蓄積できるのが強みです。

こうしたジョブローテーションを通じて、業務効率化や住民サービス向上に直結するプロジェクトに参加し、成功体験を得た職員が庁内に増えれば、組織全体でDX技術活用への理解が進んでいくことになります。職員同士が経験を共有することで、他部署の課題に対しても新しい視点で解決策を見つけやすくなり、自治体全体の推進力が高まります。

キャリアアップの中でデジタル技術を身につける機会を意識的に確保することが、人材育成と地方創生の両面に寄与すると考えられます。



デジタル人材採用枠の創設

内部での人材育成だけでは専門的スキルの充実が難しいケースもあるため、新たにデジタル分野に特化した採用枠を創設し、外部の高度専門人材を確保する動きも注目されています。

ビッグデータ分析やセキュリティ強化など、高度な知識を必要とする業務では、民間企業から優秀な人材を呼び込むことで、自治体特有の課題に合わせた実践的なDX推進が期待できます。たとえば、外部プロジェクトの経験や多様な分野の知識をもつ人材が加わると、組織内部では得られにくい視点やノウハウがもたらされます。こうした人材を活用する場合、庁内文化とのすり合わせやスキル移転を円滑に行う必要があるため、部署間の連携とコミュニケーションを丁寧に実施する体制づくりも不可欠でしょう。

新たな採用方針を設けることで、既存職員への刺激にもなり、さらなるスキルアップに向けた意識の向上につながります。デジタル人材採用枠という選択肢を積極的に検討し、DXの加速につなげる取り組みが広がっています。



専門アドバイザーの協力を受ける

総務省と地方公共団体金融機構が共同で実施している「経営・財務マネジメント強化事業」では、自治体のDXを支援するための専門アドバイザー派遣が行われており、その知見を直接取り込める利点があります。地方公共団体内部だけではカバーしきれない技術的な事項や、システム導入の具体的手順などを外部の専門家が指導してくれるため、大いに参考になるはずです。

研修や相談の機会を設けることで、職員のスキルアップや事業計画のブラッシュアップが期待され、対策立案のスピードも上がります。さらに、アドバイザーとの会議を通じて外部からの客観的な視点が加わり、意思決定やプロジェクトの進め方をより効率的に整理できるようになります。

こうした派遣制度をうまく活用することで、庁内での専門人材育成にもつながり、デジタルを活用した業務改善が継続的に実現しやすくなるでしょう。



デジタルに関する資格取得の奨励

自治体DX推進計画や全体手順書などでも示されているように、デジタル人材の確保と育成は喫緊の課題です。総務省が令和5年12月に策定した「人材育成・確保基本方針策定指針」でも、計画的に人材確保・育成に取り組む必要が強調されており、その一環として資格取得を後押しする動きがあります。

外部デジタル人材の確保ガイドブックには、必要となる要素と留意事項が整理されており、それに沿って研修の実施や、資格手当の設定などを行う自治体も出てきています。こうした施策を取り入れることで、個人はスキルアップを図り、組織全体はデジタル活用の底力を高められるでしょう。

たとえば、ITに関する基礎知識をつけられる「ITパスポート試験」、ITシステムの企画や発注をする人が対象である「情報システムユーザースキル標準」、個人情報を扱う人や外部委託先のセキュリティレベル管理を行う人を対象とした「情報セキュリティマネジメント試験」、戦略からシステム企画、調達、運用設計まで一貫して行う人を対象とした「ITコーディネータ制度」などが挙げられます。



まとめ:まずは知識をつけて「イメージ」できるようになろう!

デジタル人材を育成し確保するには、組織内の研修や採用だけでなく、周辺自治体や外部との連携も視野に入れると効果的です。総務省の「デジタル人材の育成ガイドブック」には多くの事例が紹介されており、運用担当者のインタビューから学べる情報が多く紹介されています。

大切なのは、さまざまな事例を学び「自分たちの自治体ならばどう推進するか?」を具体的に考えてみることです。担当部署内にイメージできない人が多い場合は、これまでご紹介した方法を参考に、知見を深める取り組みが必要かもしれません。知識がつけばつくほど、具体的で鮮明にイメージできるようになってきます。

サイネックスでは、自治体を対象にDXサポート事業に取り組んでいます。「DXを少しずつでも進めたい」「今までの取り組みをさらに加速したい」といったお考えをおもちの方は、ぜひお気軽にお声かけください。

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