シティプロモーションアワード2023金賞受賞!! 羽村市のシティプロモーションの取り組み(後編)
こんにちは! サイネックスマガジン編集部の島Dです。主に地域行政情報誌『わが街事典』をはじめとした紙媒体の編集をしています。さて、今回は自治体のシティプロモーションについてのインタビュー記事「羽村市のシティプロモーションの取り組み」の後編をお届けします。
前編に引き続き、羽村市の企画部秘書広報課広報・シティプロモーション係の青木悟係長のインタビューです。
1.市民記者と一緒にプロモーションサイトをリニューアル
――市民記者との連携で印象的なエピソードはありますか。
たとえば2023年10月に市のPR サイトを「羽やすめ」という愛称をつけてリニューアルしました。
その時も市民目線の意見を取り入れてリニューアルするために、市民記者さんの意見を伺いました。打ち合わせのはじめはリニューアルすることで発信する表現に制限がかかるとか、質が落ちるとか、ネガティブな意見がけっこう出ました。
私はこんなに皆さんPRサイトに思い入れがあるとは想像していなかったので、そういう意見にびっくりしました。
――市民記者の皆さんの不安なところはどういうところだったでしょうか。
市の公式サイトに似たような、行政っぽい、カチッと枠にはまったようなサイトになって自分たちの書く記事が自由に書けなくなるのではという懸念が一番強かったですね。
けれども、いいサイトにしたいという思いは私以上にあるし、指摘いただく内容ももっともだと感じることが多かったので、市民記者さんのご意見をある程度反映して、お互いに納得した上で作り上げないといいサイトにはならないと思いました。もし、皆さんを失望させてしまったら、今後のシティプロモーションにも影響があるとも。
ですから、実現できるかはわからないけど、サイトを構築する会社と市民記者さん、私と三者で意見を遠慮なくいうことを心がけました、できそうな要望にはできるだけ対応してもらって、出来上がったら確認してもらい、それに追加要素を入れたり、修正したりという作業を何度も繰り返して作っていきました。
――確かに行政っぽさのないデザインに感じました。空間に遊びを設けて、言葉より写真やデザインでイメージが伝わるような。
いまの「羽やすめ」の形になるのに半年くらいかかりました。出来上がった時は、市民記者の皆さんからも「いいサイトになりましたね」と高評価をいただけたので、ホッとしました。「行政と市民と一緒に羽村市をPRするサイトを作った」という喜びは大きかったですね。
結果的には自由度も高く、デザインも洗練されたものになって、アクセス数も格段に上がりました。イベントなどでも羽村市に興味を持ったら「羽やすめ」を見てくださいと誘導できるようになって、羽村市を知らない人が「羽やすめ」を見て羽村市のことをある程度わかるという流れが作れたと思います。

羽村市のシティプロモーションサイト「羽やすめ」
――羽やすめという愛称はどう決まったんですか。
数年前に「テレビはむら」で番組に愛称をつけようという企画があったときに挙がったもののひとつでした。そのときはボツになったんですが……。
鳥が止まりやすいところで羽を休めるかのように、市民の方々の過ごしやすい場所が羽村市には色々あることを知ってもらって、そういった落ち着く場所を知ってもらうということはすごく大事だと思ったんですね。
せっかく羽村市に住むなら日常を豊かにしてほしいという意味も込めて「羽やすめ」を提案したら、市民記者さんもいいねと賛成してくださって決まりました。
2.羽村市が好きな子育て中の市民に情報発信してもらう
――シティプロモーションを仕掛けたことで印象的なエピソードはありますか。
「はむら家族プロジェクト」ですね。これは「東京で子育てしやすいまち」を推進するプロジェクトで、羽村市で子育てしている市民の方々に協力していただいています。この取り組みがアワードでも評価されました。
その一環で、市内で子育て中のご家族が市内の思い出スポットでプロのカメラマンに撮ってもらい、その写真をプレゼントする「家族写真撮影会」という企画があります。撮った写真はご家族にコメントをもらい、羽村市ってこういう場所だよと発信するツールとして活用させていただています。

家族写真撮影会の写真(2024年度撮影)。
はむら家族プロジェクト「家族写真撮影会」2024 レポート より。
家族写真撮影会で撮った写真は、羽村市にある動物公園「ヒノトントンZOO」のイベント「愛情はむらまつり」でパネル展示しています。
これらの市民参加の企画を進める際にも市民記者さんが間に入ってくださったりしています。
それとヒノトントンZOOで2025年の年始に配布するカードを、市民記者さんと打ち合わせを重ねながら作ったんです。「ここが私の好きなまち」と小さい町だけれども、いろんなスポットとかお店とかあるよというメッセージを込めて作りました。

ヒノトントンZOOで配布したメッセージカード
3.市民の公園でやってみたいことを叶える「ポットラックプロジェクト」
――市民の方と一緒にやることが、行政にとってもいい結果が生まれていますね。
そうですね。2023年度からは市民がやりたい企画を公園に持ち寄って、行政と一緒に実現させようという事業「ポットラックプロジェクト」を行っています。
場所は市内の中心的な公園であるS&Dスポーツパーク富士見(富士見公園)の子ども広場。「トーク」「ワークショップ」「イベント」の3つのプログラムを実施しています。
面白いものだと、公園で拾える葉っぱを使ってお茶を作る防災カフェとか、生で歌ったり演奏したりするオープンマイクとか、焚火を囲む会とか、リースづくりとか、かなり自由にやっています。
――公園をそういうイベントで開放すると、どんな効果がありましたか。
参加者がだんだん増えてきていますね。参加するハードルが低いし、口コミなども広がっていると思います。このプロジェクトに共感してくださった方々が積極的に地域の人を巻き込んで企画を考えたり、来場者の話を聞いたりして、気を配っていただいています。ここでも市民記者の皆さんが協力してくれています。
一番大きいのは市民の皆さんのやりたい思いを拾い上げることです。規制がいろいろとあってあれがダメ、これもダメとなってしまうと、やる気がなくなってしまいます。せめてポットラックプロジェクトでは、やりたいことを持ち寄って、好きなように運営できる、チャレンジできるよう環境を作っていきたいと思います。そこから新しいものが生まれたり、羽村での暮らしに充足感が得られたり、友人ができたりして本当に「羽やすめ」の場所になってくれるといいですね。

ポットラックの様子
――受賞の際に「多くのシティプロモーションは行政がお客さんに対して呼びかけるという発想が多いですが、『はむら家族プロジェクト』は家族の皆さん自身が主人公になっている。まさにそこに素敵さがある」と評価されました。
とてもうれしい評価です。私たちは定住人口を増やすために「もっと羽村市を好きになってもらう」ことがミッションなので、それに一役買えていると思えるのはやりがいにつながりますね。
――楽しそうに仕事をしていますね。
そうですね。市役所で仕事をしていると、改めて気づかされることがいっぱいありました。すると、羽村市って小さいとか、大きな商業施設がないとか、人ってどうしても他と比べてネガティブな情報に引っ張られがちですけど、いろいろ知らないだけで知れば知るほどいいところがたくさん見つかると思うんですよね。
だから、市民の方にはもっともっと羽村市のことを知ってもらいたいという思いでやっています。
それに加えて、市民記者さんがすごい! 羽村愛を強く持ってらっしゃるので、毎月の会議が本当に楽しいです。毎回のように最近できたお店の情報を聞けるし、イベントの感想とか、改善点とか、本当に積極的に発言してくださるので、仕事が大変でも会議に出ると、「もうちょっと頑張ろう」と思えるんです。この人たちと仕事できるってすごい価値あることだなって思いますね。

シティプロモーションアワード2023の賞状と
羽村市の公式キャラクター「はむりん」を持つ青木さん
4.自治体の思いを形にする事業
羽村市のシティプロモーションは行政が主体の情報発信にするのでなく、住んでいる人の気持ちが発信されているところに大きな価値があるのだと、青木さんのお話を伺って実感しました。
やはりその土地に住んでいる人の生の言葉には、ひきつけられる力があるんですね。
今回のように自治体の取り組み事例を知ることで、自治体に関わる多くの人が「わが街」の価値を高めるためのアドバイスになったり、アクションを起こすことにつながったりすることがあるかもしれません。
株式会社サイネックスの情報メディア事業である『わが街事典』では、自治体の思いを形にすることを意識して事業を行っています。今後も全国の自治体職員の方々のお話を伺って思いを形にするお手伝いをしていきたいと思います。
