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地域活性化の中心!自治体の役割と具体的な仕事内容(前編)

目次
  1. 地域活性化に携わるプレイヤーとは?
  2. 自治体の役割とは?
  3. まとめ:自治体の仕事は「仲間」作り

「地域活性化のために、自治体にできることは何だろう」という疑問をもつ方は多いです。しかしそもそも、地域活性化とは、何でしょうか。

広義の意味では、地域住民が住みよい環境を作ることなので、自治体が今現在取り組んでいることが、地域活性化に繋がっていると言えるでしょう。例えば役場の窓口業務も、地域活性化に必要な仕事です。

ここでは地域活性化を狭義の意味で捉え、「今よりも地域の経済や社会、文化などの動きを活発化させる取り組み」とし、地域活性化に携わるプレイヤーや、自治体に求められている役割について、2本に分けて詳しく紹介します。1本目の今回は、「地域活性化に携わるプレイヤーと自治体の役割」に焦点を当てます。



地域活性化に携わるプレイヤーとは?

地域活性化は、自治体だけで進められるものではありません。より多くのプレイヤーを巻き込み、Win-Winの関係を築くことで、効果的で持続的な取り組みになります。ここでは、地域活性化にどのようなプレイヤーが存在するのか、詳しくご紹介します。



地方自治体

地域活性化の中心的役割を担う存在です。主な役割はプレイヤー間の調整や制度設計、予算執行や補助金制度を介した税金の適正配分です。また都道府県や国といった上位組織との調整なども行います。地域活性化の旗振り役と言えます。詳しい仕事内容は後ほどご紹介します。



コンサルタント

自治体職員にとって、「こんなことをしたいけど、具体的にどうしたいいのか分からない」という時があります。例えば「商店街をもっと魅力的で観光客も訪れるような街並みにしたい」と思っても、どのようなものが観光客を呼びやすいのか、その取り組みにいくらくらいかかるのか、実際に実行可能なのか、など、イメージできないことがほとんどです。自治体職員の多くは、商店街設計の専門家でなければ、それをやった経験がない人がほとんどだからです。

そこで、経験豊富なコンサルタントに依頼して、ぼんやりしたイメージを技術的に形にしていくサポートをしてもらうことがあります。「まちづくりコンサルタント」と呼ばれることもある仕事です。こちらの記事で仕事内容を詳しくご紹介していますので、より深く知りたい方は見てみてください。

何をしてくれるの?まちづくりコンサルティングのサポート内容



企業

企業にとっても地域活性化は重要な課題です。地域企業にとっては、地域が元気でいることは自社事業の継続や拡大に必要不可欠です。都市部を拠点とする企業にとっても、地方が元気でいることは非常に重要です。例えば外食チェーンの場合、食材調達先である地方の第一次産業が衰退すると、食材の安定調達が難しくなったり、輸入品に頼ってコスト高になったりと、リスクを抱えることになるでしょう。

企業には自治体やNPOなど公益団体にはない資本力、人材、ノウハウがあり、地域活性化を促進する仕事が期待されています。また近年は、行政サービスの一部を企業に任せて運営してもらう取り組みも普及しています。例えば公共施設の運営を任せる「指定管理者制度」や、公共事業の資金調達から運営までまるごと任せる「PFI(Private Finance Initiative)」などがあり、多くの自治体で採用されています。



NPO・一般社団法人・一般財団法人

自治体や企業でも手の届かない仕事を引き受けるのが、NPOや一般社団法人・一般財団法人などの公益団体と呼ばれる事業者です。

NPOは、地域にとって公益性が高い課題に対して、ボランティアや営利を目的としない事業による解決を試みる組織です。特定非営利活動促進法に基づき設立された法人は、特定非営利活動法人と呼ばれます。取り組みの規模はNPOによって違いがありますが、地域に根差した草の根的な仕事を展開することが多いです。一般社団法人は、公益性が高い目的のもとに企業や大学、研究機関、自治体などが集まり形成する非営利目的の団体です。一般財団法人は、同じく非営利目的ですが、一般社団法人が多様な参加者が集う団体であるのに対して、お金などの財が集まり運用することを想定しています。

どの形態でも、公益性の高い課題に非営利な仕事でアプローチする点は共通しています。営利目的ではないため信頼性が高く、一部の事業者への利益誘導にならないよう、公平な取り組みが求められる場合に活躍します。



メディア

メディアも企業の1つですが、地域活性化においては他の一般企業とは異なる重要な仕事があります。それは拡散力です。シティプロモーションの促進やシビックプライドの醸成で、非常に大きな役割を担います。

よく「新聞やテレビで紹介されて初めて知った」「前までは地域活性化の取り組みに懐疑的だったが、テレビ取材を受けて初めて、全国から注目されていることを知った」という住民の声を聞きます。メディアには、認知だけでなく啓発や、見た人の行動を引き起こす力があります。




自治体の役割とは?

地域活性化における自治体の役割は、「地域を巻き込んだ共同的な活動を推進すること」です。効果的な地域活性化策を実現するためには、地域住民、商店街、商工会、観光協会、施策に協力してくれる民間企業、国など、様々な関係者を巻き込む必要があり、それらステークホルダーを繋ぎ合わせてまとめる役割が求められます。ここからは、「地域を巻き込む」ために、自治体が果たすべき役割を具体的にご紹介します。



1. 税金の適正配分

自治体の大きな役割の1つに、予算執行があります。

予算執行とは、税金により自治体が得た財源の中から、行政サービスを実行するために支払うことです。例えば地域のブランディングのためにホームページを作ったり運営したりする場合、委託先の事業者に費用を支払います。こうした財源の配分が予算執行です。

何にどれだけの財源を用意するのかは、つまり、自治体が何に注力するのかを宣言する意思表示でもあります。単純に考えれば、使える財源が多い分野では、より多くの関係者を巻き込んだ地域活性化が可能になります。税金の配分方法を決める作業は、自治体にしかできない地域活性化の仕事です。



2. 補助金・助成金制度づくり

自治体が特に注力したい施策で、民間事業者や民間団体が積極的に参画してほしいものには、補助金や助成金制度を設けることがあります。

補助金や助成金は、事業に必要な経費の一部を自治体が補助するため、民間事業者にとっては、低いコストで事業を実施できるメリットがあります。どんな事業者、どんな事業に対して補助するのか、条件を決めるのは自治体の重要な役割です。

条件が厳しければ、せっかく用意した補助制度も利用されずに終わってしまうでしょう。一方で条件が緩すぎると、期待した効果を得づらくなります。こうした制度設計は難しい作業で、地域の実情が分かっていなければ適切なものを作れません。



3. 規制緩和

地域活性化に必要な事業を行う上で、既存の規制が企業の事業参入を大きく阻んでいる場合があります。そこで自治体が規制緩和を行い、参入障壁を低くすることがあります。例えば土地の利用用途の緩和や、事業実施に必要な行政許可条件の緩和などが挙げられます。

規制緩和をすることで、幅広い事業者が参画しやすくなり、たくさんのステークホルダーを巻き込める可能性があります。一方で、無計画な規制緩和をすると、モラルの低い事業者によって、地域の安定性が脅かされる可能性もあります。こうしたポイントを慎重に見極めて、規制緩和の必要性の有無や、具体的なルール整備をするのは自治体にしかできない仕事です。民間企業の事業性と公共性の両方をしっかり理解し、バランスを取る必要があるのです。規制の中には市区町村ではどうにもできないものもあるため、都道府県や国と密な連携を図るのも自治体の仕事です。



4. 公共インフラへのアクセス許可

地域活性化のために、民間企業や民間団体が、公共インフラを活用することがあります。

例えば公園でのイベント、公道を使ったフェスティバルやお祭り、公民館や市役所を使った勉強会・協議会などが挙げられます。こうした公共インフラは、民間企業や民間団体は勝手に使えないものなので、自治体による許可が必要になります。必要な人が、公共インフラへスムーズかつ安価にアクセスできるようにするのも、自治体に求められる役割です。

さらに、住民や観光客の回遊性(訪れた人が都市空間を渡り歩くこと)を向上させて街の賑わいを創出するために、既存の公共施設を改修する取り組みも近年は注目を集めています。例えば歩道を拡張して歩きやすくしたり、これまで分断されていた地区を歩道や自転車道などで繋いだり、街路灯を増やして夜間も歩きやすくしたりします。道路の改修はお金もかかるため、デジタルサイネージなどを用いて魅力的な案内表示を行い、訪問者を誘導するのは比較的取り組みやすい手法です。

デジタルサイネージ「わが街NAVI」



5. 専門人材の派遣

地域内に必要な知見をもっている人材がいないとき、自治体が専門的な人材を確保し、各地域へ派遣することがあります。

具体的には、専門コンサルタントやまちづくりコーディネーター、地域おこし協力隊などが挙げられます。自治体がこうした人材の人件費を一部負担することで、資金に乏しい地域の民間事業者や民間団体は、効果的な地域活性化策を検討しやすくなります。



まとめ:自治体の仕事は「仲間」作り

地域活性化における自治体の役割は、たくさんの人が地域に携わり、プロジェクトを前進していける場を作ることです。今回の記事では自治体の役割を説明してきましたが、次の記事では、地域活性化に関する自治体の職員の具体的な仕事を後紹介します。

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