自治体による終活支援とは?近年増えている理由と支援内容(後編)
終活支援という言葉を耳にすることが増えました。そんな中、実は自治体による終活支援も近年増えています。前編では、自治体が終活支援を行う背景について詳しく説明しました。後編の今回は、自治体が行っている終活支援の具体的な内容をご紹介します。
自治体による終活支援とは?近年増えている理由と支援内容(前編)
終活支援の具体的な中身
終活支援には、遺言書の作成や葬儀の準備、遺品整理や事前相談窓口などが含まれます。ここでは、具体的に自治体が行っている終活支援の内容をご紹介します。
専門相談窓口やセミナー開催
自治体の中には、終活支援のために専門相談窓口を設置したり、セミナーを開催したりしている自治体があります。たとえば、岡崎市では「終活セミナー」と題したイベントが開催され、遺言書や葬儀に関する基本情報提供や相続税制度の解説、終活に関する質問などが対象となっており、多くの市民にとって有益な情報が提供されています。
エンディングノートの配布・作成支援
エンディングノートとは、人生の終わりに関する故人の希望や手続きが記載されたノートです。家族や遺族が、故人の遺志を理解しやすくする目的で作られます。これにより、自身の人生を振り返る機会を提供して幸福度の向上につながったり、亡くなった後に手続きが混乱することを防いだりする効果が期待されています。
東京都大田区や神奈川県横須賀市などの自治体が取り組んでおり、エンディングノートの配布や、記入方法の説明を行ったり、相談窓口を設けたりしています。こうした取り組みは地域の高齢化対策を進める上で重要な役割を果たすとともに、市民にとっても終活の一歩を踏み出すきっかけになっており、多くの自治体に広がりつつあります。
安否確認の訪問
安否確認訪問は、身寄りのない高齢者や生活状況が心配される方々の安否を確認するため、自治体が職員を派遣して行っているサービスです。一般的には住民の費用負担はないとされています。職員が訪問して死亡が確認された場合、まず遺族や親族に連絡を行い、必要に応じて葬儀や納骨の手続きを遺族とともに進めます。また、身寄りがいない場合は、遺品整理や火葬の手続き等を行政が代行し、適切な対応が行われます。
葬儀会社など民間事業者との生前契約支援
自治体による葬儀会社との生前契約の案内は、死後に自分が望む葬儀が行われるよう、具体的に葬儀内容や費用等を決めておく終活支援の1つです。費用は契約者が死亡する前に支払われることが一般的で、葬儀会社が提供するサービスには、遺族への連絡や葬儀の準備・進行、納骨等が含まれます。
実際に、東京都文京区などで葬儀会社との生前契約支援が取り組まれています。自治体が民間事業者と連携し、市民にわかりやすい情報提供や適切な相談窓口を設けることで、安心して生前契約ができる環境を整えています。
相続手続きの支援
自治体による相続手続きの支援は、遺産分割や遺言書の取り扱いなど、相続に関する手続き情報を市民に提供する、終活支援の1つです。たとえば神奈川県大和市では、相続手続きに関する相談窓口を設け、遺産分割協議書の作成方法や他の行政手続きへの案内をしています。また遺言書の見本や作成方法、保管場所等についても情報提供が継続的に行われています。こうした取り組みにより、遺産分割や手続きの手間が軽減され、スムーズな相続が進めやすくなります。
自治体と民間事業者との連携
自治体と民間事業者が連携することで、地域住民に対する終活支援が充実します。具体的には、専門知識をもつ事業者による葬儀や相続手続きのサポートが受けられることや、エンディングノートの作成を促すセミナーの開催が可能になったりします。また、自治体が窓口となって、住民のニーズに合わせた民間サービスの提供が行われることで、市民はより充実した終活支援を受けられるようになります。
千葉県八千代市:民間企業と連携してエンディングノート配布とセミナーを開催
千葉県八千代市では、民間企業と連携し、エンディングノートの配布や終活セミナーの開催を行っています。市民に対して終活の重要性を認識させるだけでなく、具体的な方法や手続きについて学べる機会を提供することで、終活に対する不安を軽減し、自分らしい終活を進めやすい環境整備を目指しています。
神奈川県横須賀市:市内の葬儀社と連携して生前契約締結から履行までをサポート
神奈川県横須賀市では、市内の葬儀会社と連携して、生前契約の締結から履行までをサポートする取り組みが行われています。自治体が窓口になることで、住民は安心して相談できます。自治体は葬儀会社と連携することで、住民一人ひとりの希望をより具体的にすくい上げ、葬儀や納骨の手続きに反映できるようになります。葬儀会社としても、事前に契約獲得ができるメリットがあります。
終活支援を行う自治体は今後も増えていく
終活支援を行う自治体は今後も増えると考えられます。終活支援はまだまだ取り組み方法が模索されている段階であり、今後も自治体が置かれている状況に応じて、さまざまな取り組みが生まれていくと考えられます。