【2024年度最新版】自治体のDXには財源が必要! 補助金・交付金を紹介
自治体にとってDXは緊急に取り組むべき課題であることはいうまでもないでしょう。しかし、DXには設備導入やアプリケーション・システム導入など大規模な予算が必要になります。「やらなければならないのは分かっているけれど、予算が確保できるか不安」という方は多いのではないでしょうか。そこで今回は、政府が提供している補助金や交付金、その他民間からのの資金調達方法を紹介します。
政府は自治体DXを積極的に推進している
補助金や交付金について詳しく紹介する前に、自治体DXに関わる法律を紹介しながら、政府の方針を詳しく説明していきます。しっかり理解しておくことで、補助金申請が採択されやすくなるはずです。
2016年1月施行 :マイナンバー法
マイナンバーによる国民情報の連携、マイナンバーカードの発行、マイナポータルによるオンライン申請などを定めた法律です。マイナンバーで個人を簡単に特定できるようになっただけでなく、各行政機関が情報提供ネットワークシステムを利用して情報を連携することで、書類申請などの手間を大幅に削減できるようになりました。
参考:デジタル庁「マイナンバー制度とは」
2019年12月施行:デジタル手続法
行政手続きのオンライン化の徹底、添付書類の撤廃方針などを定めた法律です。この法律では、さまざまな手続きがデジタルで完結することや、一度提出した情報を再度提出することを不要とすること、民間サービスを含めた複数の手続きをワンストップで実現することなどを基本原則としています。
参考:内閣官房「デジタル手続法案※の概要①」
2021年9月施行:地方公共団体情報システム標準化に関する法律
地方公共団体の基幹業務システムについて、国が策定した基準に適合したシステムを統一的に利用することで、行政機関のシステムの標準化を進めた法律です。システムを標準化することで、行政機関同士の情報連携をスムーズかつ安定して行える体制構築を目指しています。
参考:総務省「地方公共団体情報システムの標準化に関する法律(令和3年法律第40号)の概要」
自治体DXに使える補助金・交付金
ここからは、自治体DXに利用できる政府の補助金や交付金を詳しく紹介していきます。
デジタル田園都市国家構想交付金
「デジタル田園都市国家構想」の実現による、地方の社会課題の解決や地域の魅力向上の取り組みを加速化・深化するための交付金です。「デジタル実装タイプ」「地方創生拠点整備タイプ」「地方創生推進タイプ」「地域産業構造転換インフラ整備推進タイプ」の4種類があり、自治体DXに関わりが深いのは「デジタル実装タイプ」です。デジタル実装タイプで用意されている4つのメニューをご紹介します。
参考:内閣官房デジタル田園都市国家構想実現会議事務局「デジタル田園都市国家構想交付金について」
優良モデル導入支援型【TYPE1】
他の地域等ですでに確立されている優良なモデル・サービスを活用して、迅速に横展開するDXの取り組みを対象とした補助メニューです。対象事業の例として、地域アプリや遠隔医療、書類を書かない窓口設置などが挙げられます。補助率は1/2です。
データ連携基盤活用型【TYPE2】
オープンなデータ連携基盤を活用した複数のサービス実装のうち、モデルケースになり得るDXの取り組みを対象とした補助メニューです。補助率は1/2です。
デジタル社会変革型【TYPE3】
TYPE2を満たし、かつ「新規性の高いマイナンバーカードの用途開拓」「AIを高度活用した準公共サービスの創出、総合評価が優れているもの」のどちらかを満たしている総合的に優良な事業を支援する補助メニューです。補助率は2/3です。
デジタル行財政改革先行挑戦型【TYPE S】
政府が掲げる「デジタル行財政改革」の考え方に合致し、国や地方の統一的・標準的なデジタル基盤への横展開につながる見込みのある、先行モデル的なDXの取り組みを支援するための補助メニューです。補助率は3/4です。
地域デジタル基盤活用推進事業
自治体等がDXの技術を活用して、地域の課題解決に取り組むためのデジタル基盤構築にかかる経費を、総合的に支援する補助金です。補助メニューは3種類あり、計画・開発・設備投資まで幅広く支援してくれます。
参考:総務省「令和6年度 地域デジタル基盤活用推進事業のご案内」
① 計画策定支援
コンサルティング等を受けながら、DXの導入計画策定を行う取り組みを支援する補助メニューです。地域課題の整理、導入計画の策定、ネットワーク構成や機器の要件定義、費用対効果の検討などが対象となります。専門家が3カ月程度派遣され、伴走型で支援を受けられます。自治体に費用負担は発生しません。
② 実証事業
先進的ソリューションの実用化を支援する補助メニューです。ローカル5Gをはじめとする、地域課題の解決や地域企業の事業活動の効率化・合理化に資する、DXソリューションの社会実証にかかる費用が補助対象です。自治体は1,000万~1億円程度の範囲内で定額補助を受けられます。
③ 補助事業
地域のデジタル基盤の整備にかかるコストを支援する補助メニューです。ローカル5GやLPWAなどの通信インフラの整備にかかる費用が対象です。補助率は1/2で、費用に上限はないとされています。
スマートシティ推進事業
防災、セキュリティ・見守り、買物弱者のための支援など、地域が抱えるさまざまな課題をデジタル技術やデータの活用によって解決することを目指す補助事業です。スマートシティの実現を、DX技術の活用により一体的に推進することを目標にしています。
具体的には、都市OS(交通、医療、教育といったデータを分野横断で集積・分析し、自治体や企業が活用するためのプラットフォーム)の検討・整備にかかるコストや、都市OSにアクセスすることで実現する、防災や子育て支援サービスの整備・改良にかかるコストが補助対象です。
補助率は1/2で、自治体が申請主体となりますが、事業にさまざまな企業が参画することも求めています。
参考:総務省「令和6年度 地域課題解決のためのスマートシティ推進事業提案の公募について」
携帯電話等エリア整備事業
地理的に条件不利な地域(過疎地、辺地、離島、半島など)で携帯電話等を利用可能とするとともに、5G等の通信を高度化するための事業です。DXに必要不可欠なインフラ整備の補助事業になります。いくつか補助メニューがあり、地方公共団体が事業主体となるものは、通信の基地施設を整備する「基地局施設整備事業」で補助率は1/2~2/3、データの送信の媒体や経路である“伝送路”を整備する「伝送路施設設置事業」で補助率は2/3です。
参考:総務省「携帯電話等エリア整備事業の概要」
高度無線環境整備推進事業
こちらもDXに必要な通信インフラ整備にかかるコストを支援する補助金です。5G・IoT等の高度な無線通信環境の実現に向けて、圏外など条件不利な地域において、電気通信事業者等による、高速かつ大容量な無線局に必要とされる伝送路設備等の整備を支援します。たとえば光ファイバを整備する場合などに適用されます。DXインフラを自治体が整備する場合の補助率は、1/2~2/3です。
参考:総務省「高度無線環境整備推進事業」
民間と連携した資金調達
自治体DXに必要な財源を確保する方法は、自前の予算や政府機関からの補助金だけではありません。民間と連携した調達も可能です。ここではその方法をご紹介します。
企業との共同プロジェクトの実施
地域のDXに必要な技術・インフラの実証事業などを、民間企業と共同で実施することで、プロジェクト費用の全額を自治体で手配する必要がなくなり、参画事業者とコスト分散をすることが可能になります。
企業としては自社技術を社会実装しながら実験したり、将来的な事業拡大に向けて実績づくりをしたりできます。民間企業にとってのメリットもあるため、Win-Winの関係構築ができるパートナー企業を見つけられれば、予算の圧縮が可能になるかもしれません。
ふるさと納税・クラウドファンディング
ふるさと納税やクラウドファンディングで集めたお金を、自治体や地域のDXに活用することも選択肢の1つです。自治体の中には、ふるさと納税のお金の使い道を納税者が指定できる場合があります。たとえば納税者が「DX化のため」と指定して集めたお金を、自治体は特定財源としてDXに活用する方法が挙げられます。
特定の地域課題に限定したプロジェクトに限定して、行政機関がふるさと納税等で財源を確保する方法もクラウドファンディングの1つです。
企業からの寄付
企業が自主的に寄付をしてくれて、そのお金をDXに活用することも考えられます。ただし寄付はあくまで企業の自主性によるものなので、コントロールは難しいでしょう。
自治体の中には、官民の共同出資でまちづくり会社を設立し、余剰利益の一部を寄付金という形にしたり、まちづくり会社が余剰金を使って行政では手の届かないDXを実現したりしている事例もあります。自治体がやると予算を確保しきれないものを、地域事業者が寄付の形で一部負担してくれたり、自ら実行したりしてくれることで、歳出削減につながる可能性があります。
まとめ
DXには大規模な予算が必要とされるため、政府は幅広い補助金や交付金のパッケージを用意しています。しかし必ずしも補助金を獲得できるわけではないため、しっかりとした事業計画をまとめて、国に説明することが求められるでしょう。知見がない中で、こうした計画づくりするのは大変な作業です。サイネックスは自治体DXを総合的にサポートしておりますので、ぜひお気軽にご相談ください。