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高齢者歓迎!自治体による老後移住支援とは

目次
  1. 高齢者の移住が注目される理由
  2. 自治体による高齢者の移住支援とは
  3. 注目されるCCRC
  4. まとめ:移住支援で高齢者も地域も元気に!

地方への移住に興味を持つ高齢者が増えています。その背景には、都市部の医療や介護施設は混雑しやすくなっており、地方で悠々自適な老後生活を望む人が増えている傾向があると言われています。

高齢者の移住は自治体にとっても様々なメリットがあり、補助金や住宅補助といった移住支援に力を注ぎ、促進する自治体も増えてきました。そこで今回は、自治体が提供する高齢者向けの移住支援の取り組みをご紹介します。



高齢者の移住が注目される理由

高齢者にとって地方への移住は、新たな趣味や地域の暮らしを楽しみながら家族との交流も広げやすく、セカンドライフを充実させるきっかけにもなり、悠々自適な老後生活の選択肢として期待が集まっています。

移住を検討している高齢者の中には、医療や福祉サービスや交通網の充実度などを事前に調べて、生活環境に関する情報収集を積極的に行う人も増えてきました。また、高齢者の移住を促進する自治体も増えています。なぜいま、高齢者の移住に注目が集まっているのでしょうか。その背景や理由を詳しく説明します。



大都市圏の介護施設はひっ迫しつつある

東京などの大都市圏では、高齢者の増加に伴って介護施設の需要が高まり続けていますが、職員を募集しても応募が集まりにくい状況になりつつあります。更に、新規に介護施設を整備するには土地購入や建設費など大きなコストがかかり、事業を運営する事業者側の立場からもハードルが高い状況です。

しかも高齢人口はこれからさらに増える見通しです。サービスを利用したくても入居先が見つからない人が出始め、入所待機や費用面の問題が深刻化する可能性があります。先述の人材確保の問題も重なり、医療や介護の提供を維持・拡大するための対策が急務になっているのです。



地方で悠々自適な老後生活を望む高齢者は多い

都市部は施設が狭くなりがちで、騒音も多いため、心豊かな老後を送るには不向きと感じる人がいます。一方で、地方なら自然を感じられる環境や落ち着いた暮らしを求めやすく、人とのつながりを大切にできる魅力があります。

地元に戻りたい気持ちを抱く高齢者も多く、昔馴染みのコミュニティで仲間と再会し、親交を温めなおしたいと考える人もいます。趣味を活かした活動を楽しむには広い場所やゆったりした時間が欠かせないため、地方での生活はそういった希望を満たしやすいと感じる人が多いとされています。こうした期待感から、都市の喧騒を離れて地方移住を検討する高齢者が増えているのです。



高齢者は移住のハードルが低め

高齢者は仕事をリタイアした人が多く、職場の所在地に縛られる理由が比較的少ないため、移住を実現しやすいといわれています。子育てが終わっていたり、介護など面倒を見る相手がいなかったりする場合は、住まいの場所を自由に検討しやすいことも大きなポイントです。

地域イベントに参加しながら新たな人との交流を生み出す高齢者もおり、まちづくりに貢献する例も見られます。いまはインターネットで様々な情報を収集できる時代でもあるため、医療機関や福祉のサービスを確認して心理的なハードルを下げやすく、落ち着いた環境で暮らしを楽しみたい高齢層にとって、地方への移住は選びやすい選択肢となっているのです。



高齢者移住によって雇用創出が期待できる

高齢者の移住が多い地域は、医療や介護サービスの需要が必然的に増えるため、関連事業が育ちやすく、新たな雇用や投資が生み出されます。企業の域外流出が問題になっている地方にとって、新たな雇用創出や産業育成ができるメリットは大きいといえるでしょう。

生み出される雇用や事業機会は、医療や介護関係だけではありません。高齢者が趣味を満喫できる場や交流の空間が広がると、新たな施設やイベントを運営したり、物品販売したりする企業や人材が必要になるでしょう。また悠々自適な生活を営める住まいが必要になるため、物件売買や賃貸などの不動産需要、リフォームや管理などの需要も増えるでしょう。

こうした動きは地元経済を活性化させ、若い世代にも新しい働き方の機会を与えます。高齢者が地域に根を張ることで、多様な人材・企業が集まるまちへと成長する可能性が高いのです。



空き家を有効活用できる可能性

地方で問題となっている空き家問題と、高齢者の住居需要と結びつければ、相乗効果を生み出せます。例えば自治体が補助や空き家バンクなどの制度を整えて、活用していない住宅をリフォームする手助けをすることで、移住を考える人が空き家活用を選びやすくなるでしょう。適切な事業者が仲介に入り、空き家の購入や賃貸へつなげる取り組みも注目されています。

地域の人口が減少していく中で、空き家を暮らしの場として再生することはまちの活気を取り戻し、治安を維持する効果があります。また、老後はのんびり農業を楽しみたいと思う高齢者も多く、農地付の空き家を用意することで、耕作放棄地対策になることも期待できます。



自治体による高齢者の移住支援とは

高齢者をターゲットとした移住支援は、移住支援金や住宅マッチングなどの一般的な移住支援に加えて、高齢者特有の支援が効果的に働くこともあります。年齢を重ねるほど医療や介護、住宅、孤独死リスクといった独自の課題が増えるため、高齢者に特化した支援策があることで、移住を検討する高齢者にとってプラスの検討材料になるのです。高齢者の移住支援に積極的な自治体のなかには、福祉サービスや交通環境を整え、自宅での暮らしを続けやすくする制度を実施しているところもあります。

また、情報発信も重視されています。地方へ定住する際に不安があっても、住まいの改修補助や生活に役立つ情報提供、相談窓口の整備があれば安心度が高まるからです。



移住・定住への補助金

自治体として独自の補助金制度を設け、移住にかかるお金のハードルを下げる取り組みは効果的です。また、国や公的機関がすでに用意している補助制度を案内することも考えられます。厚生労働省や日本政策金融公庫など公的機関は、移住を検討する人への支援制度を幅広く提供しています。

例えば、住宅金融支援機構【フラット35】地方移住支援型では、70歳未満を主な対象として移住支援金を受給した人が当初10年間の住宅ローン金利を引き下げてもらえるため、住まいの購入負担が軽減されます。

東京圏からの移住者を採用した事業者を対象とする、厚生労働省の中途採用等支援助成金(UIJターンコース)では、経費の一部を補助して移住者と企業を支える仕組みになっています。

日本政策金融公庫の新規開業支援資金(国民生活事業)を活用すれば、地方で仕事を始める際に資金面のサポートを得やすく、安定した暮らしや事業の継続につなげられる可能性があります。



地域情報へアクセス支援

高齢者が地方での生活を続けるには、医療機関やイベント、住宅情報、福祉のサービスなどの最新情報へスムーズにアクセスできる仕組みが不可欠です。地域情報誌や行政のWebサイト、SNS等を自治体が案内し、まちのニュースや必要なサービスを簡単にキャッチできるように支援します。

デジタルが苦手な高齢者に対しては、SNSの利用法を教える教室を開催したりして、スマホを扱いにくい世代でも、サポートを受けながら操作を覚えれば交流や調査の機会が広がります。コミュニティでのやりとりを円滑にするためにも、誰でも利用しやすい情報発信を推進していくことが重要です。企業やNPOと協力して機関ごとの情報を一覧化すれば、必要なサービスの確認もしやすくなるでしょう。



高齢者が利用できる公共交通機関の整備

高齢者の中には運転免許を返納する人も増えており、自力で移動することが難しくなるリスクがあります。地域のバスや電車を使いやすく再編し、時刻や経路を検討する支援が重要ですが、都市部のように高頻度で運行するのは負担が大きいこともあります。

そこで、必要時に予約して利用できるデマンドタクシーなどを導入するなど、公共交通を補完しつつ移動手段を確保する取り組みも始まっています。移動がスムーズになれば、日々の買い物や医療機関への通院などが楽になり、地域コミュニティへの参加意欲を維持しやすくなります。



高齢者の社会参加の支援

高齢者が家に閉じこもりきりにならず、外出や人との交流を楽しめる環境を整えることは、高齢者の健康を保つうえで欠かせません。高齢者が地域コミュニティに溶け込める環境は、移住者の子供など親族にとっても安心でき、応援する材料になります。
市内に住所を有する高齢者が路線バスに安価で乗れる長寿応援バス事業のように、経済的負担を抑えた交通支援があれば暮らしの行動範囲も広がるでしょう。地域ふれあいサロンでは健康体操やスポーツを通じて仲間づくりが進み、孤立しがちな人が支え合える機会を得やすくなります。

こうした社会参加の制度やイベントに加え、ボランティアや趣味の活動を紹介するセンターを整備すれば、多様な人が集まるまちとしての活気を持続できるようになります。



公営住宅などを高齢者が利用しやすくリフォーム

公営住宅を高齢者が快適に使えるようリフォームすることで、医療や福祉サービスを受けながら暮らせる環境整備に寄与します。

例えば、段差の解消やバリアフリー化、手すりの設置などを進めれば、移住者も安心して住まいを選べるでしょう。趣味や仕事を楽しめる場所が近くにあれば、家族や友人を招く機会も増え、地域への愛着が深まりやすくなります。住宅の案内と一緒にイベントを活用して街中を見てまわる機会を提供し、高齢者が地域の楽しみ方を描ける場面を提供すれば、住まい探しの検討が加速する可能性が高くなります。



高齢者の移住体験やツアー・相談会の機会提供

移住前に地域の空気感や暮らしを肌で感じられるよう、自治体がツアーや体験会を開催するケースが増えています。高齢者が医療機関や福祉サービス、交通環境を事前に見学し、趣味や仕事の楽しみ方も把握することで、実際の生活をより具体的にイメージしやすくなるのです。

家族を招待しやすい住まいを見学したり、地域のイベントを通じた交流を体験したりすれば、不安を解消しながらセカンドライフの充実を図れます。相談会では制度の利用方法や補助を確認できるため、地域や自治体の魅力を伝えながら高齢者の希望に合った住まい方を提案しやすい面もあります。



注目されるCCRC

CCRCとはContinuing Care Retirement Communityの頭文字をとったもので、高齢者が継続的に生活を送るのに必要な住居、医療施設、娯楽施設、コミュニティ視察など、あらゆるサービスが集約されたコミュニティ(生活共同体)のことです。

CCRCのポイントは、高齢者が元気なうちに移住して、社会や地域活動に参加することを想定している点です。そのため、医療介護などの社会福祉にかかるコスト増大に頭を悩ませる自治体とも、政策上の相性が良いといわれています。自治体のなかには、CCRCを人口減少対策として注目し、医療や福祉、住宅といったケアサービスをまちのなかで一体的に提供し、住民の健康と経済活動を両立させたいと考えるところもあります。

また、空き家の活用推進や交流の活性化などにもつながり、地域全体が協力して持続可能な社会づくりを目指せる手段として期待されています。



地方自治体との相性が良い

CCRCの特徴は、元気で自立した生活ができるうちから移住することで、移住先の環境に早めに慣れて社会参画を楽しめることです。受け入れ先の自治体にとっては、東京一極集中を和らげる方法にもなり、医療費や介護費の負担を抑えながら、将来的な社会福祉の支援体制を整えられる余地がある点も大きなメリットだと言われています。

自宅で暮らし続けるだけでなく、地域の活動に参加することでコミュニティに貢献しやすい健康状態なので購買力もあり、自治体が目指す人口対策や経済への波及効果、コミュニティ維持の効果も見込めます。また高齢者が若い世代や企業とも連携しながら、まち全体の活力を育める可能性があります。



継続的なケアができる準備が必要

CCRCには、高齢者が元気なうちだけでなく、介護や医療が必要になったときも安心して暮らし続けられる仕組みづくりが欠かせません。CCRCを運営するには、介護職員の継続的な確保が必要になるでしょう。

入居者の状態に合わせて段階的なサービス提供ができるように、看護スタッフや訪問介護などの安定的な配置を計画する必要があります。健康な段階では地域のイベントや仕事に関わり、体力が衰えてきた段階では支援レベルを上げるといった、柔軟な仕組みを整えることで、高齢者は安心して入所できるようになります。



CCRCのメリットを理解してもらう必要がある

高齢者にとって、コミュニティがあり、社会参加を続けながら安心して暮らせるメリットは大きいでしょう。しかしCCRC具体的な内容や、高級老人ホームとの違いを知らない人も少なくありません。自立した生活を認めつつ、段階的な介護需要にも対応可能なサービスがあることを広く伝えていく取り組みが重要です。

本人だけでなく家族にとっても、遠方からの見守りや地域交流のメリットを理解すれば、移住や定住を前向きに検討しやすくなります。自治体や運営団体は情報を丁寧に発信し、相談体制や見学の機会を設けることで利用候補者の理解を深められるようになります。



まとめ:移住支援で高齢者も地域も元気に!

全国的に高齢者を含めた移住・定住の取り組みへの注目が高まり、空き家の活用や公共交通の整備、医療や福祉の制度改良など多面的な対策が実施されています。こうした施策によって移住者が増えれば、地域のコミュニティや地域経済も活性化しやすくなります。

ただし、地元住民と移住者が共存して魅力を高め合うには、移住・定住だけを目的にするのではなく、内発的な地域づくりやコミュニティ運営が行われていることが大切である点は留意が必要です。支援制度を作るだけでなく、経済や教育、交流の場を巻き込んだ取り組みを推進し、それを高齢者の方々に認知してもらうのが大事です。

これから高齢者向けの移住支援を検討しようとしている方は、他の自治体が発信する最新の情報を調べて、体験や交流会を視察したり、詳しい人に話を聞いてみたりすると良いかもしれません。

サイネックスは、住民向けの地域医療・介護・住宅・イベント・行政など、幅広い情報発信の支援や、地域外の移住希望者などを対象としたシティプロモーションをお手伝いしてきました。例えばジャンル別情報誌である「高齢者ガイド」「健康ガイド」「空き家対策ブック」などを官民協働で発行し、自治体の負担を抑えながら地域企業の広報にも繋がる仕組み作りをしています。「高齢者移住に効果的な情報媒体を作りたい」「いま定住している高齢者の方々に知ってほしいサービスや取り組みがある」「まずはどんなものか知りたい」といった方は、ぜひお気軽にお問合せください。

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