ライフスタイル支援で多様な人材・企業を惹きつける!地域創生の試み(前編)
地方自治体が地域創生を目指し、多様な人材・企業を惹きつける、ライフスタイル支援の取り組みが注目されています。それはどのような試みなのでしょうか。本記事では、現代社会におけるライフスタイルの変化や、自治体によるライフスタイル支援が地域創生につながる理由、そして実際の取り組み事例について、前後編に分けてご紹介します。前編では、現代社会におけるライフスタイルの変化と、自治体によるライフスタイル支援が地域創生につながる理由を詳しく説明します。
ライフスタイルの多様化が進んでいる
自治体の中には、ライフスタイル支援を行うことで、地域創生につなげるところも出てきました。従来の生活スタイルからさまざまなライフスタイルが創出され、人々の選択肢が広がっており、自治体としても対応する必要が出てきたのです。ここでは、ライフスタイルが多様化している背景について、深堀りしていきます。
男女が活躍する社会!家事も一緒にこなす
いまや男女共同参画は、日本社会全体の共通認識となりました。社会全体が男女共同参画を目指し、女性の職場での活躍を推進しています。これは一方で、家庭内における家事や育児の分担が見直されるきっかけにもなっています。現代では、男性も家庭で積極的に家事や育児に参加し、パートナーと協力して家庭を支えるのが、当たり前になってきました。これにより家庭内での役割分担が変化し、新しいライフスタイルが生まれているのです。
フリーランスや副業の増加
働き方改革の流れやテクノロジーの進化により、フリーランスや副業をする人が増加しています。自分の得意分野を活かし、柔軟な働き方を選ぶ人が増え、多様な働き方が創出されているのです。この背景には、雇用の流動化や、副業を認める社会認識の醸成、自らのキャリアに責任を持とうとする人々の増加が挙げられます。従来の会社員だけにとどまらない多様なライフスタイルが浸透しつつあります。
シェアリングエコノミーの普及
シェアリングエコノミーとは、個人や企業がもっている資源を有効活用し、他者と共有する経済活動のことです。シェアリングエコノミーは個人の自由度を高めるとともに、経済活動の効率化や環境負荷の軽減にも貢献しているといわれています。
すでにさまざまなシェアリングサービスが登場しており、乗り物や住宅、スキルなどを、不特定多数が共有するようになっています。シェアリングエコノミーの考え方が社会に浸透するにつれて、ライフスタイルも大きく変化しているのです。
地域に根差した地域採用の増加
昔は正社員といえば、地方転勤が当たり前でした。しかし近年は、働く人の希望に合わせて働く地域を限定する雇用形態が増えています。誰でも転職が当たり前になる中で、企業としては優秀な人材を確保するために、働き手のライフスタイルをより尊重することが必要とされるようになってきました。
こうした取り組みが地域からの人口流出に歯止めをかけ、地域経済の活性化につながる効果が期待されています。具体的には、地域採用によって地域住民の雇用機会が増え、地域経済の循環が促進されます。また、地域ごとの魅力や特徴を活かした、新たな働き方や暮らし方が生まれ、地域の魅力や持続可能性が向上する可能性もあります。
テレワーク・二拠点生活の増加
テレワークや二拠点生活をする人が増えてきました。この背景には、デジタル技術の発展や働き方改革が推進される中で、働く場所に柔軟性をもたせることが可能となり、自宅や地方の拠点で働く選択肢が現実的になったことがあります。
多くの自治体は、この働き方の変化に対応するためにさまざまなライフスタイル支援を行っています。自治体の中には、地域の魅力を伝える観光イベントや、移住支援の取り組みなどを行い、地域活性化施策の中心に据えているところもあります。
リスキリングによる技能の多様化
リスキリングとは、これまで保有してきた技能を再評価したうえで、新たな技能や知識を身につける取り組みです。時代に合わせて市場価値が高い技能を身につけ、職業適性を高めることを目的としています。
現在の労働市場では、技術革新やグローバル化が進行する中で、必要なスキルが大きく変化しています。たとえば、生成AIの登場により、これまで重宝されてきた技能の市場価値が低くなり、新たに別の技能に対する需要が高まることが予想されます。
社会的にリスキリングの重要性が認識されるようになり、従来の職業だけでなく、新たな分野にもチャレンジできる場の整備が求められるようになりました。こうした社会の流れも、ライフスタイルの多様化を推し進める要因となっています。
自治体によるライフスタイル支援は地域創生につながる
自治体がライフスタイル支援を行うことで、多様な人が地域を拠点に活動し、地域の魅力や資源を活かした地域創生が展開される可能性があります。ここでは、自治体によるライフスタイル支援が地域創生につながる理由をご紹介します。
人口減少と都市一極集中の是正
現在、日本の地方は人口減少や高齢化が進む一方、都市部への一極集中が続いています。一方で、テレワークや二拠点生活が普及し、地方を職場と生活の拠点にすることが可能になりました。こうした変化に対応できれば、地域経済が活性化され、地域創生が進むと考えられます。具体的には、自治体が地域の魅力を積極的に発信して、人々を地方へと誘致する取り組みが、人口減少や都市の一極集中の是正につながるのです。
コロナ禍が変えた人々のライフスタイル
コロナ禍は、人々の働き方やライフスタイルに大きな影響を与えました。テレワークの普及により、働く場所や時間に柔軟性が増し、仕事とプライベートのバランスが見直されるようになったのです。また、暮らしや住まいに対する価値観も変化し、都市部だけでなく、自然に囲まれた地方での暮らしを求める人が増えています。
二拠点生活の増加も、このような価値観の変化から生じています。自治体や企業がこれらに対応したライフスタイル支援を進めることで、地域創生がさらに進むと考えられます。
多様なライフスタイルの人が集まることによるシナジー効果
多様なライフスタイルの人々が集まる場所では、異なるバックグラウンドやスキルをもつ人々が交流し、新たなアイデアや価値観が生まれます。このシナジー効果は、地域の活性化や産業発展に大きく貢献するでしょう。企業としても、さまざまなライフスタイルをもつ人材を採用することで、彼らが協力して革新的なサービスや商品を生み出し、優れた業績を実現することを期待しています。
自治体の中には、観光や地域産業の振興とライフスタイル支援を一緒に行っているところもあります。ライフスタイル支援に取り組むことで、地域の魅力発信や働く場所の整備につながり、それに魅力を感じる人が集まる好循環が生まれるのです。
関係人口が増える
関係人口とは、地域に住んでいなくても、交流や経済活動を行っている人々の数です。関係人口が増えることで、地域内の人口が少なくても大きな観光収入が見込めたり、地元企業を応援する人が増えて売上拡大につながったりする可能性があります。
関係人口が増える条件として、多くの人が地域に愛着をもてる仕組みの整備が挙げられます。その具体例がライフスタイル支援で、自治体が多様なライフスタイルを応援する取り組みをすることで、その地域に住んでいなくても、地域とかかわりをもつ人が増える可能性があります。ライフスタイル支援の取り組みを全国にアピールし、多くの人々を惹きつけられれば、関係人口の増加につながり、地域内外で新たなビジネスチャンスが生まれます。
ここまでは、現代社会で起きているライフスタイルの変化の中身と、自治体によるライフスタイル支援が地域創生につながる理由を説明してきました。次回は、自治体によるライフスタイル支援の事例をご紹介します。
ライフスタイル支援で多様な人材・企業を惹きつける!地域創生の試み(後編)